「できますか」って敬語で訊きたい。

柳橋先生(仮)の楽しい敬語こーざー。
「できますか」って敬語でお尋ねしたいときがあるとしましょう。たまになら、そんな事態に遭遇しないとも限らないですよね。私は先生のお仕事をしておりますが、学生に時々こっちの言葉喋れますかって訊かれます。ちょーーっとだけなら喋れますよって答えます。ただの学生なら「喋れますか」って普通に尋ねてくれますが、敬語とかちょっと勉強したりした学生は「喋れますか」って訊いていいのかしらって疑問に思ったりするようです。一応こんなんでも学生にとっては「先生」ですからね、気にしてくれているのだと思います。
さて、「日本語を喋れますか」ってのを尊敬語で訊く場合のお話です。ほんとうはどうか存じませんが「喋る」ってのがそもそも失礼な気がしますので、「話す」を使って「日本語を話せますか」の方がいいんじゃないかな、と私思います。お友達とするのがお喋り、先生とするのがお話、みたいな。どうなんでしょう、実際のところ。で、「日本語を話せますか」だったら、じゃーんと尊敬表現「お〜になる」と可能の表現「れる・られる」を使って「日本語をお話しになれますか」でよろしいのではないでしょうか、とりあえず。あるいは、「使う」を使って、「日本語をお使いになれますか」でしょうかね。
でもですね。「喋れますか」っていうのは、「喋れますか、喋れませんか」ってことですよ。「先生」とかみたいな相手にできるのかできないのか確認するの失礼かもしれないじゃないですか。「先生」って、今は私みたいなチャラいのもいますけど、昔はこう、やっぱり「先生」だったわけですよ。先生ってすごいんですよ。ほんとうは。今もたいていの先生はすごいですが。「先生」じゃなくて「社長」でもいいですけど。だから、そんなすごい人に向かって「喋れますか、喋れませんか」ってのは失礼なんですよ多分。できるのが当たり前です。だって先生なんだもん。っていう方針で、「お話しになれますか」はやめておいて、もうちょっと敬意を表したいと思います。そこで、「お話しになりますか」というのをね、使ったりするのです。喋れるのは前提で、喋るのか喋らないのかをお訊きするわけです。どうでしょう。
この訊き方は他にも使えます。例えば、「ゴルフはおやりになりますか」(できますか)。「ピアノはお弾きになりますか」(弾けますか)。「車は運転なさいますか」(運転できますか)。「お酒はお飲みになりますか」(飲めますか)。「甘いものは召し上がりますか」(食べられますか)。「なさいますか」は今年の夏前に使っていた教科書にも載っていたようなうっすらとした記憶。そして、「おやりになりますか」はお下品な気がしてきました。あとで考えます。
敬語ってのは、形も大事だけど一番大事なのは敬意だから、相手に失礼のないように頑張るっていうのがいつも敬語を使うときの基本方針です。だから、「日本語はお話しになりますか」でもいいけど、「日本語はいかがですか」とかでも、いいのです。学生さんにはなるべくいろいろ日常的に使って練習していただいて、就職してからちゃんと使えるようになっていただきたい、と「先生」はいつも思っています。学生のうちは下手でも間違っててもいいので。学生が敬語下手だからってキレるような先生はちょっとおかしいので、キレたりしない先生に向かってじゃんじゃん使ってもらいたいなーと思うのですよ。ま、柳橋先生(仮)はおとなのわりに敬語ヘタクソなので、人に文句は言えないってのが実際のところなのですが。