「女学生」と「女子学生」の違いも補足しとくべき?

自分が使ってる用語って、一般的なのか業界的なのか私個人的なのか、だんだん分からなくなってくる時があるのです。ここでは、「女学生」は「女学校」に通っていた女子の学生(およそ戦前の女子の学生)、「女子学生」は「中学校」とか「高等学校」とか「短期大学」とか「四年制大学」とかに通っている女子の学生(およそ戦後の女子の学生)を指していますが、厳密にいえば違う定義が存在するのかも知れません。
さて、明日といってもう一週間も経ちました、前回の続きです。自分に対する言い訳ですが、実家にいると私は何もできないのです。物理的にも。精神的にも。学校へ戻ってきたら生き返った心持ちがいたします。しかし明日にはまた帰省です。だからまたしばらく滞ることに。こんな櫛の歯のような日記を誰か見ている方がいるだなんて驚きですが(いや、カウンタはつけてますから、誰かは見てる、ということくらいは分かってるんですけど)、私はあんまりブログの作法とかをよく知らないのです。サイト運営の作法なら少しずつわかり始めてはいたんですが、サイト運営は面倒が多いですね。管理とかアップとか。ブログは簡単に日記が書けてよいです。毎日書かなきゃ日記じゃないような気もしますが。

美人論 (朝日文芸文庫) あぐり 完全版 DVD-BOX 梅桃(ゆすらうめ)が実るとき (文春文庫) はいからさんが通る(1) (講談社漫画文庫) 笑う大天使(ミカエル) (第1巻) (白泉社文庫) 動物のお医者さん (第1巻) (白泉社文庫) 美しき獲物たちの学園 由利香編(パラダイムノベルス 48) 桜蘭高校ホスト部(クラブ) (1) (花とゆめCOMICS)
左から井上章一『美人論』、NHK連続テレビ小説あぐり』(吉行あぐり『梅桃(ゆすらうめ)が実るとき』)、大和和紀はいからさんが通る』、川原泉笑う大天使(ミカエル)』、佐々木倫子動物のお医者さん』、前園はるか『美しき獲物たちの学園』、葉鳥ビスコ桜蘭高校ホスト部』です。

簡単に、前回の女子学生出荷システムに関係あるところだけ強調した紹介をします。
まず、井上章一『美人論』は、上に私が書いたような、女学生の「出荷」システムを丁寧に分析したりしている評論の本です。うまく「出荷」できなかった女の子についても少し。
NHK朝ドラの『あぐり』は、田中美里吉行あぐり野村萬斎吉行エイスケを演じた、結構秀逸なドラマです。吉行あぐりは日本で最初に「美容室」をたてて経営した、日本で最初の「美容師」です(それまで日本にいたのは「髪結い」)。吉行エイスケは大正昭和初期の小説家です。この二人の子どもには、女優吉行和子、作家吉行理恵、あと日本の代表小説家のひとり吉行淳之介、がいます。
大正時代女学生だったあぐりが借金のカタに買われるように吉行家に嫁にいき、放蕩ものの夫や子どもや姑や小姑と人間関係を築きつつ東京に進出して日本初の「美容室」(しかも夫のデザインで驚くほどモダンな店舗)を経営し始めます。夫が死んだり太平洋戦争が始まってパーマ禁止令が出たり美容室が戦災で焼失したり異常に貧乏で苦しんだりしながら、しかしとても充実した人生を送った、女性の一代記です。
あぐり』の原作が、吉行あぐりの自伝的エッセイ『梅桃(ゆすらうめ)の実るとき』です。ドラマはそれなりに原作に忠実に作られています(と思いました)。ここで注目するのは女学生のあぐりです。縁談が持ち上がった時、あぐりは女学生でした。卒業も退学もせずに結婚し、嫁にいった後も学校に通います。夫の自転車の荷台に座って登校し、学校中の話題(ほとんどスキャンダル)になって先生に怒られたり、しています。そのまま卒業も出来たんでしょうが、妊娠が発覚すると同時に退学しています。
大和和紀はいからさんが通る』は、大正後期の風俗や社会の様子を知る上で結構ためになるマンガです。もちろん少女マンガだから破天荒だしあまりリアルではないところもありますが。大正半ば、女学生花村紅緒が在学中に突然婚約者の存在を告知されます。その縁談が具体化しそのために親友と不仲になったり仲直りしたり、婚約者と恋に落ちたり、いろいろします。紅緒は縁談に反発して隣家の幼なじみと駆け落ちを計り(数時間で失敗)、女学校を退学になり、職業婦人(not労働者)になります。最終的には関東大震災の直後婚約者と結婚します。
川原泉笑う大天使(ミカエル)』は、最近実写映画化されましたが、現代ものの学園マンガです。番外編で、リリアンのようなミッション系のお嬢さま女子校に通う三人の主人公のうちのひとり、斉木和音(他の主人公二人よりお嬢さま度高し)に縁談が持ち上がります。冬のマラソン大会で公道を走る和音(高校三年)を、近くを通りがかったそれなりの家柄の社長の息子が「見初め」て見合いを申し込むという形ですが、最終的には和音が微妙に嫌がって破談になります。
佐々木倫子動物のお医者さん』は、参考までに、卒業を待たずに引き抜かれる例として、あげます。バブル期の学生であるところの二階堂が、うっかり就職面接に行ってしまったために学位なんて入らないから今すぐ退学して働いてくれと退学届けに無理矢理判を押さされそうになる、というエピソードで、まだ学校に行きたい女学生の気分ってこうかな、という、例です。

さて、出荷出荷と適当に書いていますが、ここでいう「出荷」、つまり『マリア様がみてる』冒頭に記述のある「出荷」とは、①父親や兄、祖父などの「家長」(もしくはそれに類する者)による、②女学生や女子学生の、③当初は女学生や女子学生自身の意志にはよらない、④「縁談」による、⑤婚姻、を指しています。つまり良縁を得て嫁にいくこと、を指しているわけです。だから、卒業直後にお嫁さんになっても、それが本人同士による恋愛結婚なら、それは出荷とは呼びません。ここではね。『あぐり』や『梅桃(ゆすらうめ)が実るとき』は全く本人の知らないところで進んだ縁談が突然女学生の身に降って湧いたという作品ですし、『はいからさんが通る』も『笑う大天使(ミカエル)』も、同じく本人の知らないところで進んでいた縁談です。縁談勃発後、女学生や女子学生と縁談の相手が恋に落ちようと、嫌がった主人公が自殺しようと、それが「家長」から天下った縁談である以上、この女学生や女子学生は出荷される(縁談勃発時には「見込み」であるとはいえ)ということになる、ということです。以上、「出荷」システムの補足でした。

美しき獲物たちの学園』は、幾人もの少女たちが、学園内にある一部の施設で、性的奴隷として育成され、完成後お披露目されたり個人や団体に無償や有償で提供されたりする、という設定を持つ成人向けゲームだったと思いますが、私はノベライズを読んだだけですが、この場合、女子学生たちは学校という制度の中に入れられていずれ来る良縁のために保存育成されているというわけではありません。したがって、いかにも製品めいて出荷される『美しき獲物たちの学園』の少女たちは、ここでは「出荷」という言葉を用いないで説明しなければならないのです。

桜蘭高校ホスト部』は、四巻くらいまで読みましたが、女子学生って「出荷」されてたり「出荷」を目的に育成されてましたかしら。読み直してみることにいたしましょう。