ちょっと古い本。

『コミックメディア 柔らかい情報装置としてのマンガ』NTT出版株式会社、一九九二年一二月。

○第一章 マンガは現代の薬か
香山リカ「恋する闘争者 フーコー根本敬をめぐって」
布施英利「マンガの時空 マンガは脳にマッチしたメディアである」
○第二章 少女マンガの映すもの
石山佐恵子「〈少女マンガ〉の文体とその方言性」
赤木かん子「愛情不足の子どもたち 少女マンガに見る現代の病理とその実態」
○第三章 都市とマンガ
柏木博「アトム 戦後日本の夢とテクノロジー
四方田犬彦「カタストロフとその後 マンガに見る、未来・廃墟の映像の変遷」
○第四章 マンガの表象とシステム
高山宏「メディア・コミックス わずか四〇年で四〇〇年全表象史を駆け抜ける」
松岡正剛「コミック・テクノロジーと編集工学」
○座談会 ジャパニーズ・コミックスの特殊性
「おかしさのありか 金子郁容と在日留学生による座談会」
○インタビュー マンガ雑誌の現場から
「コミックというメディアの中で、カンを頼りに時代を走っていきたい。」週刊『ビッグコミック・スピリッツ』編集部江上英樹
若い女性の微妙な気持ちを大切にしていきたい。」月刊『ヤングユー』編集部斉藤和寿
「メジャー誌ではできないことをやるのが、『ガロ』の存在意義です。」『ガロ』編集部白鳥千夏雄


ホットなジャンルの表象作品やメディアについて論文をあるいは本を書こうとすると、今まさにの作品とかジャンルについてでなければちょっと古びた印象を拭えない、といった風になる。よね。九二年出版のこの本はやっぱり少し古びているのだ。取りあげる作品、話のネタ、話の仕方、全体にもう古い。
取りあげられた作品についてのみ言うなら、今はもうサブジャンルも多様化の一途をたどって一概に「少女マンガ」だの「オタク御用達」だの、決めつけられない。極端な例しかないわけではないし、境界的な作品も沢山増えたから。それにさ。なんか何十年経っても手塚治虫萩尾望都しかいないのか、日本のマンガには。少女マンガには泡沫的でないマンガ家は三人だけかよ、と。思ったり思わなかったり。感情的だ。もう少し大人になりたい。


明々後日あたりにもう少し詳しい感想でも。