『細雪』八回目。

細雪(上) (新潮文庫) 『細雪谷崎潤一郎


細雪』八回目。
谷崎潤一郎細雪(上)』第三章(一六頁−二五頁)


○使用テキスト
谷崎潤一郎細雪(上)』、新潮文庫版。

○梗概
第三章では、蒔岡姉妹のうち四女妙子について語られる。
妙子は、二〇歳の時に恋愛の末に駆け落ち事件を起こしている。それは姉雪子が支えている為になかなか結婚できないという理由があったのだが、当然許されず、連れ戻された。その件が雪子の事件であると誤って新聞に載ってしまい、雪子がますます縁遠くなった。事件を揉み消すにあたって、鶴子の夫辰雄と雪子・妙子の仲がより悪くなって、二人は本家に居つかず幸子のもとにばかりいる。
妙子はまた女学校の頃から人形の製作を得意としており、個展を開くまでになっているので、新聞に醜聞記事も出て雪子同様縁遠くなるであろうということからも、幸子がアパートを借りてやり、弟子まで取って殆ど職業婦人並みに仕事をしていて、羽振りもいい。
そして醜聞記事の相手奥畑啓三郎とよりが戻っている。が、当人達は清い関係と言い張り、啓三郎に至っては馴れ馴れしくも幸子に挨拶に来たりする。

○気になる言葉など。
(一六頁)
・「新聞の事件」(六行目)
駆け落ち系で新聞沙汰になった事件といえば……柳原白蓮事件かな(大正一〇(一九二一)年一〇月二二日)。とかがわりと有名だと思うけれども、これは自由恋愛の果てに起こった事件だ。大富豪のもとに嫁した華族のお姫様(柳原白蓮(菀子))が若い社会主義者宮崎龍介)と恋仲になってしまい、駆け落ちをする、夫に離縁状を自ら書く、新聞にその離縁状と夫が狒々親父だとかそういう記事が載る、華族籍を剥奪される、勘当(?)になる、貴族院議員だった兄は辞職する、東京で小さい家で貧乏に暮らす、吉屋信子とか女の子に大いに受ける(吉屋信子は「燃ゆる花」(『花物語』)において、この事件を男の色を消して美化して作品化している)、そういう事件だったかと。議員の兄が辞職するところが『細雪』で妙子の義兄が銀行員を辞職しようとするところはまあ似てるともいえなくはないけど時代的にはそういうものだということで。
・恋に落ちて(九行目)
そして自由恋愛。



吉屋信子『良人の貞操』『女の友情』他
尾崎翠第七官界彷徨』他
野溝七穂子『山梔』
岩井志麻子『自由恋愛』
大和和紀はいからさんが通る


吉屋信子花物語

















(一八頁)
・(醜聞記事を)伏せてしまう(七行目)
(一九頁)
・いたずらしていたものであった(一五行目)
・彼女の日頃のたしなみ(一八行目)
(二〇頁)
・職業婦人めいてくる(五行目)
・部屋借り(五行目)
(二一頁)
・清い交際(一〇行目)

○考察
1なんか異常に馴れ馴れしい奥畑啓坊。