アイドル扱い。

こちらの大学には、春の新学期の初めに、学科全員参加のレクリエーション合宿があります。主に一年生が学科に慣れるために行われる行事です。参加者も七割くらいが一年生です。残りのほとんどが学生会です。一年生は女子が大目ですが、上級生は男子が大目です。今年もありまして、行ってきました。レクリエーションの時間の初めに、教員が全員舞台に上げられて一言あいさつをします。外国人教員もです。A先生(女性)→B先生(男性)→私と立っていた順に呼ばれてひとこと述べました。まずA先生が呼ばれて、前に出て、「きゃーーAせんせーーー!!」という女子学生たちの黄色い歓声があがり、ちょっとあいさつされて列に戻られました。続いてB先生が同じように「きゃーーBせんせーーーー!!!」という歓声に包まれました。私はそのお二方があいさつされている間、ちょっと暗い気持ちというか、何かそんな感じでした。なぜなら、「きゃーーー」とやっている学生の大半は一年生で、私は今学期一年生の授業の担当がいっこもなかったからです。つまり、私の時には「きゃーー柳橋(仮)せんせーーー」っていう歓声は上がらないだろうなっていう、ひとりだけ不人気みたいな可哀想な雰囲気になっちゃうんだろうなっていう暗澹とした気持ちです。まぁ別に人気ないのは事実だしっ、とかできの悪いツンデレみたいな気持ちで、続いて「柳橋(仮)教授」と呼ばれまして前に一歩出ましたら、どうでしょう、確かに「きゃーー」はなかったですが、「うおーー柳橋(仮)せんせーーー!!」という野太い男子学生たちの歓声(?)が。そして背後の教員の列からは「アイドルだ」「アイドルですね」というささやき声が。一瞬わけわかんないと思いましたがよく考えてみれば一年生以外は上級生なんですよね、去年私の授業を履修した、あるいは今年私の授業を履修している、という。顔見知りがとても多かったですから。多分、一年生の授業担当がない私が可哀想なことにならないように、上級生たちは気を遣ってくれて、それで「うおーーー」となったのであろうと思いました。後列からの「アイドルだ」は、男子学生による歓声の様子がアイドル歌手のコンサートの様子とたいそう似通っていたからに他なりません。正直に言いましょう、アイドル扱い、たいへん気分がよかったです。これで気をよくした私は、飲んでもいいが死なないようにとかあいさつを行い、横ピースをして、列に戻った次第です。
普段、夫を例外として、人に好かれながら生きていると思っていない可哀想な子なので、ひとさまの配慮がたいへん身に染みたという、自慢話でした。