ばるきりーの続き。

妄想爆発。ねちねちと映画を見るとかって、ちょう久しぶりにやりました。たった一分くらいのシーンを一秒ずつ何度も何度も。授業でもないし発表でもないのに、趣味だけで実写映画をこんなにネチネチ見る日が再び来ようとは。
 
昨日あれからさらに映画を見返してたら、無口な彼らはもっと可愛いということがわかりました。もうDVD返しちゃったけど。
先にその二人以外の二人を銃殺して、多分、階級が上から順にで階級一緒なら年齢が上から順にみたいな感じだったのかと思うけど、いよいよ主人公の番になった時、部下の中尉と主人公の大佐が見つめあうんですよもうこの時点で。で、アップになった中尉は、眉間に皺を寄せてるんですが、一瞬視線を揺らします。目を泳がせるまで行かないところがうまいと思います。ここで目が泳ぐと、それはつまり大佐から視線を逸らしちゃうということで、それでは何か違うんですよね。すごい一瞬だけ、目が揺れるんですよ。
見つめ合った状態で、眉間に皺寄せて目を揺らすとどうなるか、というと、不安が表現されるんです。お母さんに置いていかれる子どもとか、残り一発の弾丸で死地を切り抜けなければならないことを確認する下っ端とか、プラトニックだった恋人が急に迫ってきた時の清純派彼女とか、大事な人が自分を守るために死地に赴こうとしている時の最後の別れの一瞬とか、そういう。それで、大佐行っちゃダメだよ死んじゃうよ行かないでっていう、あと、他にもいろいろ、言っても仕方ないことを考えてるのも表現されるわけです。
しかもですね。えーと、この映画の主な事件は七月二十日に起こります。で、彼らが処刑されるのも、七月二十日。つまり夏なんですよ、しかし、全員なんか冬服で寒そうです。でもこれ、なんとなく、わかっててやったんじゃないかと思うんですよね。寒くってこそドイツっていう? で、見つめ合って目を揺らした中尉は、そのあと一瞬ちょっとだけ口をあけて、そうすると、寒いですから、白い息が漏れる、んですよ。息を吐くんじゃありません、息が漏れるんです。こう、何か言いたげに口を開けかけて、閉じる、その刹那に息が漏れるんです。言っても仕方ないこととか、あるいは、なんでクーデター失敗したんでしょうね、悔しいです、とか、俺らすっごい頑張ったのに、とか、部下だから上官に向かって頑張ってとか言えないけど言いたかったですとか、言いたそうに口を開けかけて、何を言っていいかわからないように、あるいは言いたいことが多すぎて一言も言えずに、閉じます。
中尉が口を閉じるのを見た大佐の顔が今度はアップになって、こちらは死を覚悟した顔です。で、十歩くらい離れたところにある壁の前に連行されて立ち、銃殺隊の隊長が「構え」と命令したところで、中尉が、両脇の兵を振りほどき大佐のもとに走ってきて、銃口と大佐の間に立ち、もう一度見つめ合います。この時は中尉はじゃっかん笑っています。なんか納得した時とか、何かを決めたり決意したりした時の顔です。中尉も大佐もちょっと顎をひいて、頷いて、そしたら銃殺隊の隊長が「撃て」と命令します。銃弾は全弾中尉の背中に命中して、中尉は倒れ、「終了」の号令の後で運び去られます。
そのあと、なんでか理由も言わず、もう一回「構え」「撃て」が行われて、「ドイツよ永遠なれ」とか言いながら大佐も亡くなるわけですが、中尉は多分大佐の処刑についての「終了」の号令を聞いてから亡くなったんじゃないかと。守ったよっていう。
何の話か例によってよくわかりませんが、見つめ合って視線を揺らし口を開けて閉じる、というだけのシーンで、無口キャラのいわく言いがたい万感の思いを表現するとか、映画ってすごいな、ということでした。動き全然ないんですよ。目が揺れるのと唇が微かに動いて白い息が漏れるのと、だけです。時間にしても五秒程度です。ジェイミー・パーカー(中尉の役やってた役者さん)は、だいぶ北島マヤです。映画って楽しいです。
 
でもね、さらにすごいのは、中尉が大佐を庇って亡くなったってのがどうやら事実らしいところです。なんだそれ! 
大佐は、もともと戦傷で右手が損傷してて左手も指が足りなくて、左目も摘出済みでいつも黒い眼帯だったんですけど、このクーデター失敗の折に銃撃戦で残った左腕も負傷して自決できなくなったらしいです。で、その左腕からの出血が多量で、倒れそうになってるのを中尉が支えて、刑場になった中庭まで歩いて行ったんだそうで。で、一列に並んで、上官が処刑され大佐の番になった時に、中尉が大佐を庇うように銃口の前に飛び出して、そして先になくなったと。という話をWiki先生に教えてもらってですね。もうどっからどの順番で萌えたらいいかわかんなくなった、というわけです。萌え上がるとはこのことかー、です。