「非」っていう漢字の使い方が時々気持ち悪い件。

九月も初っ端からイヤな感じですが、今日は「非」っていう漢字の使い方が時々気持ち悪い件について話したいです。前からずっと気になってたんですよ。
「非」っていう漢字は、これ一文字でなにもかもを否定されちゃったような気分になる、非常に強い漢字です。あ、この「非常に」もそうだよね、「常でない」とか、「尋常じゃない」「普通じゃない」って気分を、「非」っていう漢字を使うことで、その強さまで表してる気がしませんか? 「非」だけじゃなくて「無」もそうですし、「否」もそんな気分です。「未」はちょっと優しい気がします。
 
で。今日気になったのは「人非人」っていう言葉です。ちなみにYahooさんの辞書で「人非人」は「にんぴにん」と読み、次のように定義されてるみたいです。「1 人道に外れた行いをする者。ひとでなし。2 インドの俗神、緊那羅(きんなら)の通称。その姿が人に似て人ではないのでいう」。使う時にはだいたい1の意味で使いますね、姿が人に似てるけど人でないものについて話をすることはあんまりないような気がします。
人非人」は「にんぴにん」て読むのが多分一般的なんだと思いますが、私としては「ひとでなし」と読みたいです。そっちの方が気分が出るでしょ。
 
さて、「人非人」ですが、この熟語はこのままだとあまりに漢語的です。むしろほとんど漢文です。ですから、書き下し文(でいいんでしたっけ? 読み下し文? いや、書き下しだった気がします)に致しましょう。「人ニ非ザル人」ですね。「ひとにあらざるひと」と読みます。
「あらざる」は「あり」+「ず」です。丁寧に言うと、そこにあるとかないとかの「ある」の古典的な形であるところの「あり」の未然形「あら」と、打ち消しの助動詞「ず」の連体形「ざる」の合体した形、ですね。さらに丁寧に説明すれば、「あり」は、打ち消しつまり否定する気分の助動詞がくっつくから、「あり」という言葉を使ってるけどほんとは気分的には「まだない」んですよ。だから未然形を使うんですよね。で、「ず」の方は、後ろにさらに「人」っていう名詞(体言の一種でいいんですかね?)がくるから、「体言にくっつく(連なる)形」をとります。や、こんなんなんとなくな気分でいいんですけど、説明できそうな気がしたから、つい。間違ってたらすみません。しかももし受験生の人が見てたらごめんなさい。
この、「あらざる」って、「あり」と「ず」が一緒にいる形だから、気分的には英語の「is not」と同じじゃないですか?
さてここで、「あらざる」の意味っていうか気分がわかったところで、漢字に戻りましょう。「非ざる」。ねぇねぇ、おかしくないですか? 何がって、漢字の「非」は、それ自体で「打ち消し」の意味を持ってるんですよ。それに、さっき確認したじゃん、「あらざる」は「あら」+「ざる」で、「ざる」の方が「打ち消し」つまり否定を表してるって。つまり、否定の意味を持ってる漢字に、否定の意味を表す助動詞をくっつけた形、それが「非ざる」。変でしょう? 「is not」の「not」の部分だけが送り仮名に出てる形、でも漢字の意味としては「非」が「not」。……気持ち悪いと思いませんか?
 
もし、この解釈とか品詞の意味とか漢字の意味とかむしろ品詞分解の仕方とかが間違ってたら、ごめんなさい。新学期始まって絶賛鬱進行中の私が凹まないようにこっそりあるいは優しく教えてやってください。ていうか文自体が意味不明だったらごめんなさい。
 
あぁ、もし万一、間違って紛れ込んでこられた受験生の方がここを見てらしても、あまり文章は鵜呑みにしないで、ご自分で辞書ひいたり先生に訊いたりなさってくださいね。この日記、ごくたまにですけどかぎかっこの話とか文学作品の話とか真面目な言葉を使ったりすることがあるし、今日に至っては品詞分解だとか連体形だとかいう言葉が頻出してますから、絶対に受験生みたいな方は紛れ込まないって言い切れないところがあるのですよね。ていうか、「絶対」なんて、多分どこにもないですもん。……この「「絶対」なんて言い切れることなんかどこにも存在しないもん、絶対」っていう言いようもまた大きな矛盾ですよね、どうかなこういうので説得にかかろうとするやつとか。