いとせめて。

出がけに、ベッドの角に膝をぶつけました。うちのベッドはダブルくらいの幅があって、私の通り道にちょうど角があるのです。そして、その角の高さはちょうど私の膝くらいです。そんなベッドですが、私は寝る前にベッドの上で「いとせめて」のおまじないをします。会いたい人に夢の中で会えるおまじないです。寝間着を裏返しに着て、会いたい人のことを考えながら、次の和歌を三回唱えて寝るんですよ。
「いとせめて 恋しきときは むばたまの 夜の衣を 返してぞ着る」
小野小町の歌です。「いと」は、とっても(「とても」ね)、「せめて」は、せめて夢の中では会いたい、の省略して抒情的にした感じ。「いとせめて」で、「あぁ、せめて夢の中では会いたい。会いたいの。……言わないけど」って感じかな。「むばたまの」は「夜」を夜らしく表現してるの。「夜の衣」はパジャマね。「返して着る」は裏返して着る、「ぞ」は強調で、「返してぞ着る」で裏返して着るんだよ、と。「恋しくて恋しくて、あなたに会いたくて仕方ない時はね、寝間着を裏返して着て寝るんだ。夢の中ではあなたに会えますように、って、おまじないしてるんだよ」っていう、ちょっと切ない歌です(おかしいな、上の訳では微妙な切なさがちっとも伝わらないぞ)。
これを三回。その時相手の写真を胸に抱いてやったりすると、なおのこと叙情的。で、三回唱えたら寝るの。パジャマ裏返しで。そしたら夢の中で会えるんだって。今のところまだ夢の中では会えていません。疲れ果ててから寝るから、朝までぐっすり。……いや、夢は見るな。最近はマンガの夢をよく見ます。昔はよくアイドル歌手さんの夢を見たものですが。やっぱりその時はまってる何かの夢をよく見るものよね。うん、私は会いたい誰かよりマンガの方が気になってるわけだ。
それにしても昔の私ならここで、「夢の中でだけ会える」というキーワードの異形小説とかを書いてたところですが、日記ではやらなくなっただけ成長したってことで……ってわけでもないんだよねぇ。