エコな森林開発まであと450年。

もののけ姫 [DVD] 『もののけ姫

もののけ姫』のラストでは、アシタカがサンに、「共に生きよう」と宣言します。そなたは森で、私はタタラ場で、みたいな。時々会いに行くよって。多分、いつか森と人が和解して、一緒に暮らせる日が来たら、一緒に暮らそう、っていう希望を提示する感じでしょうか。でもね、私は、アシタカとサンが一緒に暮らせる日が来るのは450年以上後のことだと思ってるのですよ。450年後っていったら、現代です。
アシタカはタタラ場を、森と和解する方向に持っていこうという決意に満ちているように見えますが、タタラ場はそんなことはできません。森と和解する方向で共同体を建設したら(タタラ場を再建したら)、たちまち周りから攻め滅ぼされてしまうでしょう。そうならないためにそれまでずっと森を切り開いてダメージを与えながら成長してきたんだから。森がなくなったら人も生きてはいけない、ということを人が知るのは『もののけ姫』の推定年代より450年ばかりのちのことです。
でも450年のちにも、まだまだで、多摩丘陵から狸が駆逐されたり、神さまのためのお湯屋はなんかどこかの坂の街の端っこで営業してるし、どっかの住宅会社は五本の木計画とかって庭の端にちょっと木を植えたらそれで里山を切り崩したという事実が無化できるみたいなCMをうってるし、スーパーのレジ袋を有料化したために家庭から出るごみ袋にスーパーのレジ袋が使われなくなって処理場の焼却炉の温度が上がらないから仕方ないから石油をかけて燃やしてるんだとかいうし、さらに数百年後には腐海が地球上を埋め尽くすんですよ。
もののけ姫』といい『千と千尋の神隠し』といい、ハッピーエンドに見せかけて少なくとも恋愛は成就しないラスト、好きなのかな。私は好きでも嫌いでもないけど。『ハウルの動く城』は恋愛は成就してたな、でもソフィーは恋人ができると同時に幼児と老人の介護を一手に引き受けるというなんか幸せなんだかなんなんだかわかんない生活だよ、ハウルがソフィーの家事を手伝うなら紛れもなくハッピーエンド。私は自分のこと嫌いだった人間に介護をするとかちょっと嬉しくないけど、家事や家政に生きがいを見出すことができる立派な人はそうでもないのかもしれない。私はまだまだです。家事は洗濯しか楽しくないもん。