アナザー・ワールド。

土曜日、東京へ行きました。その日は東京に泊まりました。
日曜日、お茶の水駅周辺の路上で、おかしな感じの初老の男性に声を掛けられました。「○○へ帰りたいけどお金がないから数百円貸してください」。ごめんなさい、早足で逃げました。通りすがりの人でいいならとてもたくさん歩いていたのに真っ直ぐ私の方へ向かってきたから怖かったんです。
月曜日、バイト先の学生さんに言われました。「先生、生きる力を感じない顔してるよ」。むー、無気力ってことかしら。
同じく月曜日の夕方、レンタルビデオ屋で、おかしな感じの初老の女性に声を掛けられました。「おねえさん、映画とかたくさんみるの」。ごめんなさい、黙って逃げました。人はたくさんいたのに私の方へ真っ直ぐ向かってきたしそれに目がちょっと焦点の合っていない感じで怖かったんです。
火曜日と水曜日は何もしませんでした。雨もざかざか降っていたし。二日間、朝も昼も夕方も夜も、寝ていた気がします。無気力でした。何も出来ない。
木曜日、食事の支度をするのに買い物に出かけました。舗道の端に生えている雑草から、常ならあまり聞こえない音が聞こえます。大して風も吹いていないのに、ざわざわ、ざわざわと、揺れてその音が耳にやけに大きく響きます。雨の後で晴れたので、空気がきれいで、月が大きく見えました。公園のブランコが、揺れています。歩いている舗道の、右手は国道で、スピードを出した大きなトラックが、通ります。ヘッドライト。砂利を踏む音。また静かになって車道とは反対側にある空き地の、端に植えられている水木の木が、今度は微かに吹いた風に、揺れます。風が止まって、足元の草が、ざわざわと、鳴ります。私の通る横だけ。普段は聞こえない音が大きく聞こえ、人は一人も通りません。木や草や雲や空や月ははっきり見えて、信号や車やガードレールは若干ぼやけている気がします。これはいけないと流石にその時思いました。明日は学校へ行きましょう。用事がなくても。生きている人と口をきかなくては、このままでは、そのうち、見えてはならないものが見えてしまうかも知れません。
金曜日、学校へ行きました。人と口をきき、おやつを食べました。
最近あったことはこのくらいです。生きる力無く生きているのか死んでいるのか分からない生活をしていると、人が踏み込んではならないところへ近づいて行ってしまうみたいです。