芸術に触れる。

http://www.art-museum.city.nagoya.jp/tenrankai/2006/niki/index.html
 
名古屋市美術館ニキ・ド・サンファル展に行きました。ニキ・ド・サンファルは、心のケアのために絵画を始め、師匠(のような人)に技術はいらないから感受性で描くことをすすめられ、近代的な暗い絵を描いていたのが、特定の男性(離婚した夫)に関する作品を絵画とは違った形で表象したところから、現代の芸術家とか前衛の芸術家として大成します。自伝的な作品群が、フェミニズム芸術の名で呼ばれます。有名なのは、非常に豊満な女性の身体を立体で表しそれにポップでカラフルな彩色を施した「ナナ」という一連の作品群です。この「ナナ」は、女性の友人が妊娠出産するところに想を得たということで、「豊満な女性の身体」を表したといっても「エロス」は微塵もありません。だからといって「母性」を適用するのも間違っていると思われます。というか、「ナナ」からは「エロス」も「母性」も感じません。
私は、「ナナ」シリーズを含む中期から後期の丸々としてカラフルな作品群を見て穏やかな心に触れた心持ちもしましたが、初期の暗くて攻撃的でとげとげしい作品群の方に惹かれました。初期作品の中に、「射撃芸術」と呼ばれる作品群があるんだそうで、白いオブジェに絵の具を仕込んでおいて後からライフルで射撃(本人が)して絵の具を飛び散らせて彩色(というのかどうか分からないですが)するという作品です。ごちゃごちゃとして様々なモチーフ(マリア像とかキリストとか戦闘機とかカトレアの花とか籠とか赤ん坊の人形とか兵士とか馬とか釘とか)とかが混在している白いオブジェがそもそも印象的です。枠を作ってそこを埋め尽くさなければならないというところに強迫観念を感じますし、それを射撃するという一種の破壊行動にも芸術的だという以前に問題を感じます。悪いといっているのではありません。私には思いつけないからすごいと思いますし、それによって表現される作品などは迫力を感じます。むしろその問題部分に感銘を受けます。射撃して絵の具を飛び散らせろという方法には、「死と再生」みたいな意味があって、一度作られたものがもう一度生まれ変わる、みたいな方法なんだそうです。言葉で表すと簡単で、少し嫌ですが。
私も人に感銘を与えてみたいです。可愛いとかきれいとかまとまってるとか、そういった印象を受けるのもいい作品だとは思います。が、人の心を動かす作品を、作ってみたいです。絵画や彫刻、小説、なんでもいいです。何かがしたい。