マリアさまの心。

それはサファイア
何でサファイアかって云ったら、サファイアにはマリア様にふさわしい最も高貴で高潔なイメージがあるから、とかな気がします。宝石はけっして身を飾る過剰な装飾品としてだけ存在するのではありません、みたいな。
 
マリア様がみてる くもりガラスの向こう側』がネット上で妙に評判が悪いみたい。どうやら、本題がなかなか進まないのにイライラしてらっしゃる方が多いような様子です。このあたりで云う本題とは前作『未来の白地図』から継続している問題、つまり、祐巳ちゃんが妹を作ること、瞳子ちゃんが観念して祐巳ちゃんの妹になること、瞳子ちゃんの抱えている問題とやらが解決すること、これらのことに尽きると思います。確かに『くもりガラス』では、これらの問題はまるで解決されないどころか、ほとんど触れられることもありませんでした。そういう意味で云えば『くもりガラス』は「番外編」的作品であると云えるのかも知れません。
でもね、ちょっと待ってください。『マリア様がみてる』の主題は、接点のない赤の他人であった祥子さまと祐巳ちゃんが姉妹になって、問題を解決しながら関係を高めまた深めていく、といったものであったと私は思っていますが、大きく間違っているとは云えないでしょう? それなら『くもりガラス』は「番外編」的だとは云えなくないですか? むしろ主題に沿って進められていて素敵じゃないですか。どうでしょう。だめかしら。
私がこういう風に思うのは、ひとえに、祥子さまと祐巳ちゃんが仲良くしているのが好きだからで、瞳子ちゃんが嫌いだからです。
ついでに云うと祐巳ちゃんが瞳子ちゃんを妹にしたいと云い出した理由が皆目分かりません。唐突にすぎる気がします。しかも執着する理由も分かりません。どう見たって説明不足です。
もちろん『レイニーブルー』において祐巳ちゃんが瞳子ちゃんに「小姑の意地悪」をされたから納得がいかないと云うわけではありません。その問題は『パラソルをさして』で解決されているし、いじめられた方の祐巳ちゃんのわだかまりも後に(文化祭期間などで)解消されて、二人は普通くらいに仲のいい先輩と後輩になっていたと云えるでしょう。でも、あくまでふたりは普通の先輩と後輩にすぎないと云う描き方しかされていないのですよ。かつてほとんど恋敵状態だったのに姉妹の契りを結んじゃう程仲良くなっていた、と云うような描かれ方はしていないのです。つまり、本文に書かれていることを鵜呑みにするなら、祐巳ちゃんが瞳子ちゃんを妹に望む動機がまるでないということです。
仮に祐巳ちゃんの側には動機があるんだとしましょう。でも、瞳子ちゃんはかつて祐巳ちゃんに意地悪をして祥子さまを奪おうとした(ように見えた)、悪役(ヒール)でした。お陰で、それ以来十冊分もの歳月が流れているのに未だに根強い「アンチドリル(瞳子ちゃんのことが嫌いな『マリみて』ファン)」が一定数存在するのです。それら「ある種のファン」に媚びることが必要だろうと云っているわけではありません。が、説明は必要だろうと、思うわけです。つまり、祐巳ちゃんが瞳子ちゃんを妹にするならそれでも良いけど、それならそれで祐巳ちゃんの心情を書けよ、と云っているのです。現在の祐巳ちゃんは、突然何かに憑かれたように、瞳子ちゃんを妹にしなきゃと云っている、みたいな状態に見えます。脈絡もないし、必然性もありません。だったら可奈子ちゃんでもいいし藁しべでも問題ないじゃないですか。
 
書き終わってからつらつら眺めると、やっぱり感情のままに書いた文章って子どもが書いたとしか思えないですね。高校生くらいの文章です。