マリアさまの心。

それはサファイア
 
マリア様がみてる』最新刊を読んじゃった私と妹は、これだけはあって欲しくない展開について、意見を交わしました。
「柏木さんと祐巳ちゃんがくっつくことだけは避けたい」というような趣旨のことを妹が云いましたので、私は、「それも嫌だけど柏木さんと祥子さまが結ばれるのも見たくないけど、でもユキチ(祐騎。祐巳の弟)と祥子さまが結婚するのだけは何があっても見たくない!」というような趣旨のことを申しました。云ったからにはそんな可能性が皆無ではないと思っています。
なんでユキチと祥子さまの結婚が嫌か。
マリア様がみてる』が異性愛をメインに扱った小説だったら(つまり祥子さまと祐巳の恋愛や友愛が読者の妄想のたぐいだったら、というほどのことですが)かまわないのです。一向に。むしろ「祥子さまったら祐巳ちゃんとは女同士というくびきのために結婚できないからってユキチと偽装結婚するなんて素敵なお考え。これで本当の姉妹になった二人は……きゃー☆」などと萌え上がって喜ぶまでです。
しかし『マリア様がみてる』は女性同士が友愛を結ぶエピソードをメインに扱った小説です。ソフトな進行だとは言え一冊の半分を費やして女性同性愛者を主人公にしたエピソードまであるくらいです。そんな意識の高いと言っていい作品が、結局は異性愛に回収されてしまうかと思うと、お先真っ暗全巻捨ててしまうぞという気分にもなろうというものです。
だいたい柏木さんが同性愛者じゃないなんて(三冊くらい前に明らかになった衝撃の事実なんですが)、読者に対する裏切り以外の何でもないじゃないですか。柏木さんが男性であるにもかかわらず同性愛者だから、祥子さまや祐巳ちゃんの側にいても安心してみていられたのですよ、私は。柏木さんは祥子さまと祐巳ちゃんとの関係を絶対に脅かさない、とね。祥子さまは柏木さんを微妙な避け方をしているので問題の外だとして、祐巳ちゃんと不仲になったり恋仲になったりしたらユキチとの関係を進展させるのに支障がでますもの。しかし柏木さんはどうやら異性愛者であったことが判明、同時に祥子さまのことを好きらしいということまで仄めかされました。最近の柏木さんときたら祥子さま(とおまけに祐巳ちゃん)を陰から見守る「何もかも解ったおとなの男性」みたいな役どころで、気持ち悪いことこの上ないです。祥子さまと祐巳ちゃんは、柏木さんにこっそりフォローしてもらってようやく姉妹の関係を維持できるような、そんな間柄では絶対にないないです。「なかきよ」に使う千代紙を届けるくだりなんか偶然と云うことにしてありますけど柏木さんの株を上げようと作家が必死みたいな印象で、ますます柏木さんを嫌いになる一方です(個人的な私生活のスケジュールから部屋の小さい引き出しの隅まで全部知ってるストーカーみたいな印象を受けるエピソードなんですよねこれが)。