『細雪』一三回目。下巻第二十七章。

細雪 (下) (新潮文庫) 谷崎潤一郎細雪 下』。

☆第二十七章はこんな話。
井谷が神戸を去るので、幸子ら姉妹に挨拶に訪れ、置き土産に雪子の見合い話を持ち込む。
☆使用テキスト。
例によって新潮文庫版(平成七年第七五刷)。
第二十七章は二四七頁から二五九頁。
☆梗概。
第二十六章で起こった雪子と妙子の諍いは翌々日にはなかったことのように、わだかまりのない様子になり、啓坊が満州に行かないことを妙子は告げる。
数日後、幸子らは井谷が神戸の美容院を人に譲り渡米することを知る。井谷は帰朝後は東京に進出するので神戸は家も引き払うことになるが、慌ただしく準備を進めるので誰も送別会などが開けない。
渡米にあたり上京するについて井谷が挨拶に蒔岡家を訪れ、雪子の縁談を持ち出す。高学歴を持ちながら半生を放浪して過ごした、実家が華族筋で金銭面は何とかなるような、亜米利加や東京などでふらふらしていた、御牧家の庶子実という人物である。井谷は雪子と御牧を引き合わせるために蒔岡姉妹に上京を促して、帰った。
☆気になる語句など。
・活版刷り(二五〇頁三行目)
要するに印刷物のことだが、井谷はよほど慌ただしく神戸を発つことになっているので、いちいち手書きする暇はなかったであろうという推測ができるにしても、印刷して配るほどたくさん知人がいたとは驚きだ。美容院はその辺の商店とは違ってコネクションを大事にする業種であるのだろうということがよくわかる。