桜庭一樹、『荒野の恋 第一部 catch the tail』、一回目。

荒野の恋〈第1部〉catch the tail (ファミ通文庫) 『荒野の恋桜庭一樹著。ファミ通文庫エンターブレイン)。


エンターブレインは、森薫といい桜庭一樹といい、素敵な女の子作家を世に出しててしかも作品の質を落とさせない、いい出版社だなあ。と、思ったんだけど、桜庭一樹の代表作『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』と『GOSICK』シリーズは他の会社(富士見書房)だった。


さて、『荒野の恋』だけど、好きすぎて怖気づいてるので、今日は興味を持った点の列挙にとどめておこうかと。付箋がなくて代わりに挟んだレシートの細く裂いたやつが、本を開くたびに落ちそうになって怖いから。

○『荒野の恋 第一部 catch tha tail』、桜庭一樹著、ファミ通文庫エンターブレイン)、二〇〇五年六月一日初版発行。

○興味を持った点など。
・(六四頁、一〇行目−一六行目)
「――いつもは制服姿の、その新しい友達は、〔…〕早めに咲く花だ。」
△女の子の目から見た女の子の記述。まなざすとか、まなざされるとか。

・(九四頁、一六行目−九六頁、五行目)
エスカレーターを降りて〔…〕ほら、入るぞ」」
・(九五頁、一六行目−一七行目)
「自由なからだ。/性とも。悲しみとも。無縁な。」
・(九六頁、四行目)
「「すなわち、スレンダーは秀才。巨乳は天才。〔…〕」
△奈々子さんは性的な存在か否か。

・(一二三頁、九行目)
「〝性欲をともなう強い好意”」
△性欲というものについての言及があるんだが、実際に至ってないという理由で性欲や性(セクシュアリティ?)の有無を判定していいか(至っていないから存在しないという方向性からなんとなく吉行淳之介『夕暮れまで』を連想する私)? この作品には性は描かれているのか否か。思春期の少年少女から切り離せるわけないじゃん、性が。とおもう。

・(一二六頁、八行目−一二七頁、一四行目)
「――テストが近づくと、〔…〕ただの説明だ。」
性教育の描写のあるライトノベルなんて初めて見た(様な気がする)。この辺が桜庭一樹の学園生活のリアリティ(この世界らしさ)なのね。

・(一二八頁、一行目−一二九頁、四行目)
「「……よくわかんないよね」〔…〕なにかを言いかけた。」
△性器に言及。見たとか。リアリティ。これでも経血の匂いがしない小説なのだろうか、これは。

・(一二九頁、一五行目−一三〇頁、一行目)
「江里華の言葉のせいだけど、〔…〕最近……。」
・(一三〇頁、三行目−一三一頁、三行目)
「「山野内ってさ……」〔…〕顔を見合わせている。」
・(一三二頁、一行目−一三三頁、一行目)
「翌朝。〔…〕ため息がもれた。」
△まなざされる対象としての荒野。荒野の、まなざされる身体。

・(一三三頁、一〇行目−一七行目)
「その日。〔…〕ごそごそと捜す。」
・(一三四頁、一六行目)
「「お腹、痛い」」
・(一三五頁、八行目−一三八頁、九行目)
「「悠也……お薬、買ってきて」〔…〕倒れ込んだ。」
・(一三六頁、六行目)
「「いやなの……」」
△満を持して(?)月経の描写。月経を描く、月経痛について描く、普段嫌なことがさらに嫌だということを描く、非常にプライベートなでデリケートな事象だから人によってマイルールみたいなのがあるとか継母と対立するようなしないような(折り合いの悪い継母に頼むくらいなら同年代の男の子に頼むほうがまだましだという描写)。

・(一七九頁、八行目−一八三頁、一〇行目)
「はぁ、とため息をつく。〔…〕襖を開ける。」
・(一八二頁、八行目)
「そっちの人」
・(一八四頁、五行目−六行目)
「「〔…〕気持ち悪いなんて自分で言っちゃダメよ。そんな悲しいこと。〔…〕」」
△とどめを刺す一撃。同性愛なのか何なのかまだ未分化で未知数な同級生女子の荒野への(「性欲をともなう強い好意」の)告白。「キモッ」とか「気持ち悪いよね」とか「気持ち悪いなんて言っちゃダメ」とかわかってない荒野とか。それはともかく。立ち聞きなんてどうでもいいけど、継母蓉子さんの発言が素敵。ここで「擬似恋愛」という言葉が無批判に出てきたら凡百の偽「「新しい」恋愛の形」小説だが、使わないのだなその言葉を(批判的に出てきたら、凡百の「「新しい」恋愛の形」小説だ)。



ざっとこんなものか。なんていうか、一言一句って感じで気にもなれば注目もし、好きでもあるので、どうしようもない。引用長い長い。びっくり。
何とかしてこれの話がしたいなぁと、思うけれども、あたしがやらないで誰がやんのとか数万人がやるわとか、思うけれども、難しいところだ。