読書タイム

変身 (講談社文庫)  天使の耳 (講談社文庫)  仮面山荘殺人事件 (講談社文庫)
左から順に『変身』、『天使の耳』、『仮面山荘殺人事件』、全部東野圭吾

……こんな日もあるよね。


『変身』長編。多分初読。
強盗の銃弾から少女をかばったしがない会社(作業系)員が頭部を撃たれ、植物人間になるところを脳移植によって社会的生活を回復する。事件以前と同じ社会に復帰した彼はしかし微かな違和感に気づく。以前なら気にもとめなかった社会の不条理がいちいち何でも気に障るのだ。違和感は日に日に強くなり、自分の能力から気質から趣味嗜好に至るまで何もかもが変わってゆく。自分の脳には何が移植されたのか。
何が移植されたのか、私には主人公が目覚めた時に分かってしまったので、その後は彼が自分の脳に組み込まれた物を検証し同定していく作業に付き合ったのでした。それでも面白いと思わせるのは文章の持つ力と細かいエピソードの意外性だよね。


『天使の耳』短編集。多分再読。
深夜、信号のある交差点で起こった目撃者のない自動車同士の死亡事故。A車の運転手は前方不注意、同乗者は睡眠中。B車の運転手は死亡、同乗者は視力障害を持つ美少女だった。事件は解決を見ないと思われたが、視力障害の美少女が視力の代わりに驚異の聴力を持つことが判明し、事件は大きな展開を見せる。(表題作『天使の耳』。)
「被害者」が自分の力で復讐をなし遂げるもの、うまく逃げおおせたと思っている「消極的な加害者」が足下をすくわれるもの、自滅するもの、風が吹いて桶屋が儲かるみたいな偶然に復讐されるもの。一作品を除きおおむね勧善懲悪的な物語にできている。
法律の網の目は「加害者」にそれをくぐる気があろうがなかろうが「交通弱者」に不当な犠牲を強いることがある。「」をつけたのは、この小説群における「加害者」であり「被害者」「弱者」だから。
だいたい薄幸の女性は美人特に美少女に、悪いことしてる人は悪そうに書かれてるのは一般向けの推理小説だからだよね。私はこういうのを「大人の本格推理」と呼ぶことにしているのだ。


『仮面山荘殺人事件』長編。多分既読。