『細雪』一六回目。下巻第三十章。

細雪 (下) (新潮文庫)  谷崎潤一郎細雪 下』。

☆第三十章はこんな話。
二日目の「見合い」の前に、一日目に雪子らと御牧の顔合わせが行われる。
☆使用テキスト。
谷崎潤一郎細雪 下』、新潮文庫版、平成七年代七十五刷。
第三十章は二七四頁から二八四頁。
☆梗概。
お茶の席で井谷が幸子に、御牧の側に雪子や蒔岡家についてどのように伝えてあるか、詳しく述べる。雪子と妙子は話がその方面に向かうので、席を立つ。雪子の顔のシミ、妙子の生活なども、御牧の側は問題視していない。
夕食後、井谷から幸子に電話があり、雪子は衣装替えをして催促の電話がかかるほど待たせてから、三人で井谷の部屋に招かれる。そこでは、井谷の洋装とか妙子の和服とか、「こいさん」という方言とか、御牧の近況とか京阪神に住むならどこに住むとか、番茶とウィスキーで話が遅くまでよくはずむが、見合いとか縁談とかそういう空気にはならず和やかである。
翌日、幸子と雪子は資生堂の美容室へ出かけるが、大安で婚礼が多かったため異常に混んでいて、昼に入って終わったのは夕食会の約束の時間ギリギリであった。
☆語句など。
・妹さんを貰うんじゃないんだから(二七六頁一行目)
妙子の生活ぶりや世間での噂などをきいた御牧の反応であるが、結構現代的。
・今日は大安だもんだからご婚礼がとても多いのよ(二八三頁五行目)
雪子の縁談について東京に出向いているわけだから、婚礼が多い大安に見合いを兼ねた夕食会があり、その支度をしている時に同じ種類のめでたい話を耳にするというのは、いい方に暗示的。