梨木香歩『りかさん』読了。

りかさん (新潮文庫) 
梨木香歩『りかさん』新潮文庫、平成十五年七月一日初版発行、平成十五年七月二十日二刷発行。

表題作『りかさん』、「養子冠の巻」、「アビゲイルの巻」。「リカちゃん人形」が欲しかったようこにおばあちゃんがくれたのは「りかさん」というなの日本人形(しかも朝夜着替えさせなきゃいけなかったり一緒に寝たりご飯も一緒に食べたりと結構手がかかる)。「りかさん」と仲良くなってからようこは周囲のお人形の声が聞こえ微妙に変化する空気感がわかるようになった。「養子冠の巻」では足りない分だけ継ぎ足された雛人形の不和を、さらに足りなかった小道具ひとつで解決する。「アビゲイルの巻」では「養子冠の巻」で解決されなかった何かを守っている汐汲人形の役を終わらせて守られていた「青い目の親善大使」(の焼かれたもの)を供養し背守を失くした人形の背守を縫い付けて解放する。
ようこがりかさんとともに出会う事件をゆるゆると解決に導き、祖母の方向へ人として成長する連作短編二作。
同時収録「ミケルの庭」は「アビゲイルの巻」に登場したマーガレットの話。

梨木香歩ちょっと好きかも知れないと思いました。『りかさん』は、ようこにふりかかる通過儀礼的な事件や物事が大して自分の力でもなく解決するけれどもそれを通しておばあちゃんから生きる力や対応ということを学び、都会的でない素敵人生の素敵さを読者に提示してくれるので。問題解決に必要なのは身に余る力ではなくて適切な力を持つ人に頼ることができることだと私は『りかさん』から得て、問題解決に当たろうという気力さえも奪ってしまうような『現実的』な物語から遠ざかれる気分。