『雁』について、何か書こうか。

雁 (岩波文庫 緑 5-5)『雁』森鴎外

例によって絵が欲しいから岩波文庫にリンク貼ってます。


使用テキスト
森鴎外『雁』(新潮文庫。昭和二十三年十二月初版、昭和四十三年三月四十二冊改版、昭和五十八年十一月七十二刷)。
新潮文庫版解説は片岡良一氏。


壱(五頁−九頁)


梗概。
「僕」は古本屋巡りが仲立ちとなって下宿で人気の一学年後輩岡田と親しくなる。岡田は役者的でなく体育会系的な美男で、学業にも金銭にも時刻にも明朗な模範的書生(学生)であった(つまり才色兼備である)。明治一三年の出来事である。


語釈。
・古い話である。(一行目)
 同じ一行目に「僕は偶然それが明治十三年の出来事だと云うことを記憶している」、終盤というかラスト八行(一一五頁九行目)で「[…]もうその時から三十五年を経過している」とある。随分古い。
 この書きようは、現在の話ではないぞという注釈の役目も果たす。簡単だ。
 この物語を額縁構造と呼んで差し支えないか。全部の文章を今の回想の形で書いているので、違うよね? 額縁構造というのは現在語っている人間と額縁の中身で語っている人間が違うものでなければならないという感じがするが。現在の「私」と過去の「私」という風に。これについて、ちょっと勉強してこようか。
・明治十三年(一行目)
 一八八〇年。あ、鏡花が生まれた年だ。
・箱火鉢(八行目)
 写真。http://www.mus.city.kasugai.aichi.jp/imple_detail.php?id=3067&nu=6&page=1
 上の写真のホーム。http://www.mus.city.kasugai.aichi.jp/
 暖房事情は悪いよね、明治一三年なら。部屋自体は寒くて何もなくて、人間のいるところだけ火鉢を置く、が一般的。そろそろ洋館も建ってたら、暖炉とかだったか。ストーブが輸
入されたのは明治だが、明治何時かは分からないのか。
(七頁)
・無縁坂(四行目)
 今の文京区にある。で、観光名所ほどではないスポットというか、ローカルスポット? になっている。みたい。不忍池の近く。坂の上に無縁寺があったらしい。です。
 現在の写真。http://www.tokyo-kurenaidan.com/ougai1.htm
 上の写真のホーム。http://www.tokyo-kurenaidan.com/
 「坂の誘惑」。http://lapin.ic.h.kyoto-u.ac.jp/hobbie/saka.html
 上のホーム。http://lapin.ic.h.kyoto-u.ac.jp/ ……先生じゃん!
藍染川(四行目)
 別にお歯黒のように水が汚いわけではないのね。染物屋さん(別名藍染屋さん)が多く並んでいたから藍染川。
(八頁)
・文学趣味(一行目)
 明治一三年では、日本の近代文学史はまだ力弱い。明治三年スマイルズ中村正直訳)『西国立志編』(同人社)、五年福沢諭吉『学問のすヽめ』、七年二月成島柳北柳橋新誌』、三月森有礼ら「明六雑誌」創刊。この後は、明治一五年井上哲次郎新体詩抄』、一八年硯友社設立、など。文学的に読むものといえば洋書とか? 古本屋に出ているといえば、江戸時代から流れをくんでる冊子的書籍のたぐいかな。丸善は明治二年に創業を開始している。