『細雪』四回目。

細雪(中) (新潮文庫)細雪谷崎潤一郎


先のを終わらせないうちに次へ行ってはいけませんと思いはするのですが、飽きるのですよ。ええ、五章分まとめてやろうとするのがいけないのです。分かっているのです。では今日から気が向いた時に一章ずついきますか? そうですねえ。


谷崎潤一郎細雪(中)』、四回目(第十六章)。

使用テキスト:
谷崎潤一郎細雪(中)』(新潮文庫、昭和三十年十月三十日初版発行、平成九年四月十日七十七刷改版、平成十年五月十五日七十九冊)
新潮文庫版注解:細江光氏

梗概:
九月一日、震災記念日である。夕食後、地震の話、先日の水難の話など災害について歓談したその夜に、大正何年以来という猛烈な台風が関東一円を襲う。安普請の借家は風によって今にも倒壊しそうで、女子どもの多い蒔岡家の一同は恐怖するが、隣近所の普請のいい家屋はまるで影響を受けていないようなので、隣家である小泉家に揃って避難させて貰う。

語釈:
(一二九頁)
・震災記念日(一〇行目)
 一九二三(大正一二)年、九月一日の関東大震災。正午、伊豆大島付近の海中を震源地とした東京湾相模湾沿岸一体を襲った地震。というか、地震によって起こった災害、二次的な災害、人災、みんな含めて、関東大震災である。都会で高層の建物が倒壊し、昼食時であったために(あるいは電気やガスが通っていたために)方々で出火し、木造の家屋の密集していた下町から延焼し(燃え広がり)、広範囲での激しい火事のために上昇気流を生じて竜巻が発生し、川や池などには水を求めた火事の被災者が溺死し圧死し、流言飛語が飛び交ったので在日外国人が少なからず虐殺され、どさくさに紛れて社会主義者が一掃されようとし、大杉栄伊藤野枝(他、全七名)が虐殺され、復興にも何年もかかり、浅草一二階は半分に折れてなくなった、関東大震災である。
小学校でいつから九月一日が震災記念日でイベントが行われていて、いつ頃なくなったのか、阪神淡路大震災の記念日は、多分関西の大抵の学校では黙祷とかがなされていると思う。でも、「震災記念日」みたいな呼ばれ方で「地震・火事」の避難訓練が行われるのは、九月一日。関西でも。
・大正何年以来という猛烈な颱風(一四行目)
 注解に拠れば、大正一三年。日本は台風銀座以外の土地でも東北以外は年に数度台風に上陸されて被害に遭うし。関西は毎年二から三回は学校が休みになるよ(公立小中学校は、気象庁から暴風警報が発令されると臨時休校になる)。東北は年に一回上陸すれば多い方だったかな。東京も多そう。太平洋側だし。
大正時代の自然災害データベース。http://inat.hp.infoseek.co.jp/taisyous.htm
このデータベースのホーム。http://inat.hp.infoseek.co.jp/index.shtml
・風の害の少ない関西(一七行目)
 関西(蘆屋の辺りは特にか?)は瀬戸内海に面していて、台風に限らず風の害のあることが確かに少ない。高知県とか和歌山県とかで、外海からの風(冬に関東で吹いてる「空っ風」とか、名古屋でも冬場太平洋から風吹いてくるし)はとまり、台風の被害は暴風と云うより風雨といった感じ。日本の中で瀬戸内海性気候って、ヨーロッパの地中海性気候みたい。
(一三〇頁)
・昭和九年の秋(一行目)
 昭和九年の室戸台風
昭和前期の自然災害史。http://inat.hp.infoseek.co.jp/syowaz.htm
この記事のホームは、前出。
室戸台風の襲来。http://www.tanken.com/muroto.html
この記事のホーム。http://www.tanken.com/
・非常な物凄さ(一一行目)
 「超すごい」みたいな「非常に微妙」みたいな「超ビミョー」みたいな。谷崎は美しい日本語の使い手の筈なんだが。よほどすごい風だったんだろう。